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ゆびさきがもどった

 この人の感情を害することなしに、わたしの知っているわずかなフランス語の単語でもって、あなたの美しいお国はわたしたち亡命者にとっては砂漠でしかないのだと、いったいどうすれば説明できるのか。この砂漠を歩き切ってわたしたちは「統合」とか「同化」とか呼ばれるところまで到達しなければならないのだ。当時、わたしはまだ、幾人もの仲間が永久にそこまで到達できぬことになろうとは知らなかった。
 (アゴタ・クリストフ/堀茂樹訳『文盲』白水社、2006年、p.63)



 来年の目標は「五感をめいっぱい使う」「粘って勝つ」「執拗に読みまた書く」です。
 ことしはほんとうにほんとうにいろいろありすぎたので除夜の鐘をききながらだばーっと振り返ってみます。
1月
 卒論。3万字中2万字を実質残り10日で書くというぎりぎりっぷり。感想は「やればできるんだから普段からもうちょっとずつやれよな」。論文としてはあまり良いできとは言えないけど、読み物としてはおもしろく書けた自負はちょっとある。いちおう80点ぎりぎりの優をもらえました。

2月
 卒論提出したのもつかの間、金魚ファーの原稿を書いて公聴会の準備して、公聴会を終えて即手紙魔まみトリビュートの原稿とかを書く。生協のポイントでステーキを食べる。日記に「ゆびさきがもどった」って書いてある。ゆびさきがずっと幽霊だったのだけれど、ちゃんとさわれるようになった。

3月
 北野天満宮で梅を見る。横浜でいとこの結婚式に出て、次の日大宮へ。ポッキーを理想的な角度で「食うかい?」って差し出すことに成功する。大宮サンセットのほんものをみる。新宿でいろんな人とサシでお茶したりごはん食べたりする。合宿では貴船に吟行にいったりかつくらでとんかつを食べたり夜中に宿の廊下でカップラーメン食べたりする。短歌会を追い出される。京都を出る前の夜、後輩とあかつきでラーメンを食べる。

4月
 運転免許をとるべく教習所に通う。しにそう。運転はできるかぎりしたくない。富山の歌会に参加する。あんまり覚えてない。室生犀星の王朝小品集を読んで「犀星もこんなくそ田舎嫌いだったんだろうなー京都に帰りたいなー」としみじみしたりとかする。

5月
 文学フリマで金魚ファーラウェイを出す。この前後から大森靖子「ミッドナイト清純異性交遊」をなんどもなんどもくりかえし聴いていた。でも派手なグッバイは蹴散らす。

6月
 誕生月なんだけど仕事で毎日車に乗らなきゃいけなくてほんとうに嫌で嫌で生きた心地がしなかった。共有結晶の原稿を書いてた。

7月
 あんまり覚えてないです。

8月
 暑いと感じなかった。寒くなくていいなーって思ってるうちに夏が過ぎた。ほんとうに寒がりになった。旧柳田村の満天星に泊まったりビュッフェしながら歌会したり富山で成田亨典を見たりとかする。

9月
 兼ネルとか共有結晶の原稿をうんうん唸りながら書く。愛知の友人夫妻を訪ねたり、東京から会いに来てくれた人から思いがけない言葉をもらったりする。

10月
 日記に「しあわせになるのがこわい」って書いてある。この6年くらいずっとそうだった。でもそれも終わり。月末の金曜日の夜、仕事のあと特急と新幹線に乗ってハロウィンの東京に降り立つ。

11月
 池袋で秋刀魚ラーメンを食べ、新宿でロシア料理を食べる。そのあと都庁に登る。東京が昼から夜にかわっていくのをみる。みせてもらう。ふたつめの連休もまた東京へ。あんみつを食べる。わけわかんないくらいおいしかった。相棒とマラソンリーディングに出て朗読する。そして文フリ。

12月
 滋賀の草津まで歌集の批評会に行く。朝ちょっと京都に寄って、おひるごはんたべて、山科から間違えて湖西線に乗る。山が雪をかぶっていて寒かったけれど湖の上はすっきり晴れていた。近江舞子で引き返す。最後の週末に千葉でふたたび(春のとは別の)いとこの結婚式があった。幕張の三井アウトレットで運命のカーディガンと出会う。結婚式の翌日、サンシャインシティで買い物をして、水族館には入りそびれて、アイカツ!の映画をみて星座パフェ食べてハミレスでハンバーグエビフライを食べる。明日もきっと好きだとつよく、あたりまえのようにおもう。

 
 よく聴いた音楽はなんといっても大森靖子で、一人で車運転するときは『絶対少女』を全編歌うことでなんとか精神を保っていました。あと空気公団とか。プリティーリズム・レインボーライブの音楽もほんとうに心の支えだった。

 読んだ本。教養がなさすぎて今さらすぎてはずかしいのだけどシェイクスピアの四大悲劇を読みました。アンデルセン/森鴎外訳『即興詩人』、宮本輝『錦繍』(いろいろもやっとするところもあるけどそれでも)、野上弥生子「大石良雄」、いしいしんじ『ぶらんこ乗り』あとは文フリの戦利品のかずかず。
 漫画は志村貴子『放浪息子』を最後まで。あと薦められて読んだ新井煮干し子『ふしぎなともだち』!
 詩歌はいろいろあるのでまたまとめたいですね……(ていうかブクログに登録できない本も多いので……)塚本の『茂吉秀歌』5冊を読んだのと、あと印象の鮮やかさで言うと野樹かずみ『もうひとりのわたしがどこかとおくにいていまこの月をみているとおもう』、そしてつい2日前に読んだ佐藤文香『君に目があり見開かれ』。
 全ジャンル通して、なんといってもエーコ『薔薇の名前』が今年読んだベストでした。京都を去る前に上巻を、北陸に戻ってきてから下巻を読んだというのもまた良い読書体験だったという気がしています。

 とか書いてるうちに年変わってたですね。みんなできるだけすこやかに生きて、できたら果物とか食べて可能な限りつらくなく生活していてください。また遊んでね。
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